3人が本棚に入れています
本棚に追加
ズバリと隆也に言われてコーヒーを吹き出しそうになった。何で隆也がそんな、片想いの期間だなんてものを知っているんだ。言葉が出ずに口をパクパクしていたら隆也は前を向きながら俺さーなんて、先日の久志くんみたいに話を始めた。
「たぶん、お前が兄貴への気持ちを自覚したとき、一緒にいたんだ」
「……え?」
「高校受験前の、たまたま兄貴が東京から帰って来てた時だろ? うちで勉強見てもらってたら咲子は不安だって言いだして」
車が減速して、止まった。いつもの長い信号の前だ。
ちらりと私を見た隆也の手が近づいてくる。普段なら「何よ」と払いのけるのに、今は体が動かない。目も、離せない。
あの時の久志くんと隆也がいやに重なるからだ。久志くんと違い仏頂面なのに。隆也の手は固まる私の頭に乗って、優しく撫でてきた。
「咲ちゃんなら、大丈夫。だってこんなに頑張ってるんだから」
「!」
「って、こーんな感じに頭撫でられた時だろ?」
「な……」
最後は余計にぐしゃぐしゃと髪を乱して、隆也の手が離れた。触れられたところが熱いしなんでか心臓がバクバク鳴っている。
久志くんじゃないのに。隆也なのに。
最初のコメントを投稿しよう!