隣がいい

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「ほら隆也、早くDVD返して来なよ」 「はいはい。ついでに何か借りてくるわ」 「早めに頼むよ、咲ちゃんだって疲れてるだろうから」  振り返ればいたのは久志くんの弟、隆也だった。久志くんの弟で私と同い年。この前、車の免許を取ったらしいが、私と同じでマイカーは持っていない。  でも高校入ってすぐにバイクの免許は取っていた。だから未だにそっちに乗っているイメージが強い。後部座席とはいえ、車に乗っている姿に違和感を覚える。  ちなみに、久志くんが迎えに来られない時は隆也が来ていた。その時だってバイクだったし。  ってか隆也、いつDVD借りに来たんだろう。 「ごめんね、早く帰りたいのに」 「ううん、全然。お客さんならありがたいし」 「……咲ちゃんは本当にいい子だね」 「いやそんなことないよ」  小さな疑問は優しい久志くんの声を聞いた途端にどうでもよくなる。いい子だなんて、とんでもない。むしろ、このままふたりきりで帰りたいなんて酷いことを考えている。  でも、隆也とはいえこんなところで置き去りにしたら危ないよね。弟に何かあれば優しい久志くんはきっと悲しむし辛いだろうから。
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