隣がいい

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「ずっと遠距離で不安にさせてたんだけど、これからは結婚前提にって。この前あっちの親にも挨拶してきたんだ。いや、緊張したよ」  困ったように言っているけど、久志くんは本当に嬉しそうだった。8年前、と指折り数えると私がまだ中学生か、下手したら小学生の時だ。  その時から久志くんのことは好きだった。でもそれは、兄を慕う妹のような好意だったかもしれない。異性としての好きに変わったのは中学を卒業する頃。  高校受験に自信が持てなくて、泣き出しそうになった私の頭を優しく撫でてくれた。 「咲ちゃんなら、大丈夫。だって、こんなに頑張ってるんだから」  そう笑った久志くんの言葉に安心して、落ち着いて勉強ができた。試験当日もその言葉と笑顔を強く思い出して、無事第一志望に合格。受かったと伝えれば、久志くんは喜んでくれて……。 「ね? 大丈夫だったでしょ?」  信じていたよ、とまた笑ってくれて単純な私の好きはあっさりと恋心に昇華してしまった。  でも、遅かったんだ。その時すでに、久志くんの隣には、いたんだ。恋人が……生涯を伴にしたいと願う人が。 「よし、到着」 「あ、ありがとう」
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