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美月・待ち合わせ場所へ
映画の途中で約束の時間が近づいてきた。
いつも夫婦喧嘩の後に投げつけてくる、私の自己肯定感を下げる母の言葉を避けるように洗面所に向かう。顔を洗ったりメイクをしたり。それらを終えるとそのまま忍者のようにこっそりと足早に家を出た。
そして、友達の大和(やまと)と待ち合わせした近所のコンビニまで歩いて向かった。
どっち買おうかな。ペットボトルのお茶の所と野菜のパックジュースの所を行ったり来たりして、飲み物を迷っていると、同じ動きをしている男の人を横で感じた。ちらっと見ると、ばちっとお互いの目があった。
マスクをしていてよく顔が分からなかったけれど今の人、私と小中学校一緒だった初恋の同級生に似ていたな。
そう、あの夢の中に出てくる蒼空くん。
まさかね。そもそも大人になって、かなり見た目変わってそうだし、私は人の顔を覚えるのが苦手だし。マスクもしているし……。もしも本当にすれ違っても分からなさそう。
大和の白い車が店の窓から見えたので、麦茶2本と梅とシーチキンのおにぎり2つを買いコンビニを出ると大和の車に乗り込んだ。
「おはよう。いい天気だね!」
「ね、良かった! はい、お茶どうぞ」
「ありがとう」
映画の話や同級生の話など、途切れることのない会話をしながら、ここから2時間程で着く海へ向かった。
少しだけ開けた窓から入ってきた風が優しくふたりを包んでくれて気持ち良かった。
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