さようならの時

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さようならの時

 いなくなるということをふたりに伝えた時、多くを語ってしまうと僕の感情のコントロールが出来なくなって、取り乱れることが分かっていたので、必要最低限な言葉だけを伝えた。  蒼空が何度も、いなくなるなって言ってくれた時、これ以上言われたら涙が溢れてきそうだったので、本当にギリギリなところまで耐えたけど、もう無理だと思い 「分かったよ!」 と嘘をついてしまった。 ごめん……。  家の中の僕のものは少しずつ片付けていたけれど、美月は、美月の広くなった世界の中で忙しくて気がついていない様子だった。 そのことがとても嬉しかった。  美月が完成させた絵をみた。 あっちの世界線で3人でみようと約束した景色だ。 繊細で優しい気持ちになれる絵。 「3人で一緒にこの景色、見たかったなぁ……」  行ったことないけれど小さい頃から頭の中で描かれていた景色なんだってことを美月は教えてくれた。  でも、何でここの景色なのだろう……。  この世界線では美月をここに連れていくことを避けていた。連れていくことが出来なかった。  美月の記憶はなさそうだけど、もしかしたら一緒にこっちの世界に来たのかな。なんてね、ありえない。
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