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4-3. 原理主義者の暴走
モチベーションの高いスタッフ、住民の献身的な努力のおかげで、アレグリスはどんどん整備が進んでいった。工場も農場も希望者に貸し出し、住民たちが自発的に生産を行うようになっていって経済も自発的に回るようになってきた。
そしてアレグリス産の産品は各国で高い評価を受け、高値で売れるようになってくる。そうなると、移住希望者も増え、さらに生産力は上がっていく。また、アレグリスで新たな命も生まれ始め人口も順調に増えていった。
その日、ヴィクトーは兵器工場の所長を部屋に呼んだ。
「製造は順調かね?」
ヴィクトーは切り出す。
「自動小銃AK47は無事量産に入りました。構造が簡単なので出来もまずまずです」
「それは良かった。で、それを千丁急ぎでお願いしたい」
「え!? 契約では百丁……ですよね?」
驚く所長。
「急遽方針が変わったのだ」
ヴィクトーは力強い目で所長を見すえた。
「えっ!? でも、防衛するのに千丁も要らないのでは……? AK47の性能は驚異的ですよ。百丁もあればどこの国の軍隊も瞬殺できる程かと……」
不安そうな所長。
「心配しなくていい。これは国王陛下のご意向なのだ」
「レオ様の……。そうであれば……問題ないですが……」
「いいかね? アレグリスは人類の未来を担う国だ。万が一にも侵略を受けてはならんのだ。そのためには軍事力だ……わかるね?」
「は、はい……」
「悪いね! 至急増産体制に入ってくれたまえ。それから、グレネードランチャーRPG-7の開発も急いでくれよ」
そう言ってヴィクトーはニヤリと笑い、所長の肩をポンポンと叩いた。
「これはまた……キナ臭いのう……」
パルテノン神殿の下、地下神殿でレヴィアは頬杖をつきながら画面をにらみ、つぶやいた。
レオたちに相談もなく勝手に軍拡を進めるヴィクトー。
不気味な動きはこの後も少しずつ地下で進行していったのだった。
◇
いよいよ初の選挙の日がやってきた。これで権限を議会へと移譲してレオの仕事は完成となる。
テレビでは候補者の公開討論会が中継され、ウソ発見器のメーターが赤に振れるたびに観衆の笑いが起こってコンテンツとしても面白い仕上がりになっていた。
投票はスマホで行われ、締め切りと同時に結果が公表される。勝ったのはヴィクトーの自由公正党だった。ヴィクトーは自警団の人脈をベースに、国の立ち上げをしっかりと具体化していった点が住民に高く評価されたのだ。また、ウソ無くスパッと断定的に言い切る話術も頼もしいと好感されたようだった。
その夜、国権移譲式典が開かれ、レオから首相であるヴィクトーにドラゴンをかたどった金のプレートが受け渡された。
「ヴィクトー、頼んだよ」
レオはニッコリと笑いながら握手をした。
「国王陛下の理想は必ずやこの私が実現して見せます!」
ヴィクトーは熱い情熱を瞳にたぎらせながら、ガッシリとレオの手を握る。
オディーヌは拍手をしながら感慨深く二人を眺めていた。
レオの掲げた理想の挑戦はついにレオの手を離れ、羽ばたいていく事になる。
もう、レオには実権は無い。ただ、国の象徴として国民に愛される存在になったのだった。
「じゃあ、我もそろそろ行くとするかのう……」
「えっ!? レヴィア様も行っちゃうんですか?」
「もともとどこか一国に肩入れするのは禁忌なんじゃ。シアン様ももうおらんし、これ以上いたら管理局に怒られるわい」
「せめてレオに挨拶を……」
「湿っぽいのは苦手じゃ。達者でやれよ」
レヴィアはそう言うと空間を切り裂いた。
「あ……。ヴィクトーは何やら企んどるぞ。注意しとけ」
レヴィアは思い出したようにオディーヌに言った。
「え? ウソ発見器では宣誓にウソは見られませんでしたよ」
「逆じゃ、レオの理想に感化され過ぎとる。過ぎた正義は暴走するんじゃ。まぁ、収まるところに収まるしかないじゃろうが……」
「暴走って?」
「ふふっ、お主ならもう分かっておろう。……。では、また縁があったら……な。楽しかったぞ」
そう言うとレヴィアは、空間の裂け目をくぐって自分の神殿へと帰っていった。
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