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1.避けたい嘘
死にたい、彼はずっと繰り返しそう腹の底で思っていた。何故なら、昔、犯罪を犯し、未成年を暴行したからだ。遺族に金を無心され、精神的に参っていたから、自分は死にたかった。首を吊りたい、どうやったら死ねるだろう?彼は、毎日定時制の高校に夜、通い、重たい車輪のペダルを漕ぎながら、自責の念に駆られて、死にたいと願っていた。夜、皆が寝静まる頃、彼は、助けて、と小さな声で言った。尾崎豊と言う人が死んだ時に、何故か惹かれた。それで彼の音楽を聴いて、彼に救ってほしいと、毎晩眠る時に祈っていた。
彼は、罪の意識から、希死念慮を抱えていた。オレは家では家族と飯を喰うのを嫌っていた。親とも誰とも口を聞かずに、悪魔と言うものはなんなのか、そんな訳の分からない物騒な本や、性的虐待を受けた被害者の告白本を良く読んで、自戒した。罪が彼自身を追い詰めて、学校でも虐めに遭っていた。だから、そんな自分自身を変えたくて、ひっきりなしに、デスボイスの、死臭のする気味の悪い世界に脚を踏み入れた。このまま行くと、僕は死んでしまう、そう察した彼は、家庭内の不和にさえ、耳を閉ざした。彼の弟が、虐められていた。彼が昔した、罪、性犯罪が、マスメディアが世間を味方にして、我が家を崩壊に導いたからだ。彼は、本当に人殺し達の末路を描いた、書物を沢山好んで読んだ。殺されたいと願う人がこの世に本当に僕みたいな人間が居るんだな、そうマイケルギルモアの書いた『心臓を貫かれて』を読んだ時、そう素直に思った。
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