2.背徳のカルマ

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2.背徳のカルマ

女の子が、まだ歳はもいかない子供が、寝そべり、瞳を濡らし、ファインダー越しに遠くを見つめているそんなカットの写真集が書店で見かけ、彼は迷わず、買った。その写真家は昭和の時代、まだ世間を震撼させる子供誘拐事件のなかった頃の、平和だったその時代に、ナニも知らない無垢な子供達に警戒されずに、見事に子供達を騙し、セクシャルな写真を写した。子供達はスカートが捲れてパンツが露になっていた。それは、そう言う系統を好む男性に爆発的に売れた。その一人である彼は、それをつぶさに眺めながら、毎夜毎夜、自慰をした。風呂にも入らず、毎晩7回もオナニーを繰り返した。パンツは、汚くよごれて、性液のツンとした匂いが鼻についた。驚くことに、彼は翌朝洗いもせず、学校に通っていた。流石に皆、鼻をしかめて、匂いが異臭だと、感じていた。彼は、風呂に入るのが嫌だった。髪の毛がベタベタで、フケが溜まっていて、頭を掻くと、白い粉が、机にたくさん落ちた。頭、痒いな…そう彼は呟き、夜はドアを叩く音で、眠れず、瞳は真っ赤に充血していた。鏡で、自分の顔を見ると、ヒビが入っていて、自分の顔が歪んで見えた。毎晩、SNSを開き、リスカしている人達が、両親や兄に殴られていると言う呟き、リストカットした痕を見ながら、泣いていた。頼むから、僕の前で切らないでくれ…彼は懇願するように、自分の過去を思い出すから、辞めてくれと、自分の腕も血だらけで、穢れているにも関わらず、昔の自分の罪を思い出してしまう恐怖から、精神が破綻していた。僕は昔確かに、通学路を歩いていた、少年をストーキングして、裏の路地で、いたずらした後、殺した。その時の事は今でも、自分でよくわからない。段々、自分でも歯止めが効かなくなっていて、その内に、殺しちゃいそうな気がしていた。小さな子供を怒鳴りつけ、それに恐怖を感じた子供は、頭が真っ白になっていた。その時の彼が、何年も経った頃、成人した姿でたまたま、バイト先で見かけた時に、僕を見て震えているのが分かった。レジでレシートを渡し、よく見ると彼の身体はガリガリに痩せており、顔の頬も痩けていた。後で、自分の額から大量の冷や汗が湧き出て、自分がしてしまった罪の過ちを、いかに恐ろしい事をしてしまったかを、自覚して、暫く、仕事にならなかった。 僕は、皆から死なないでと言う声を聞いてはいたけど、それを振り切り、これから自分がしようとしている事の、恐ろしさを自覚しない様に、頭からそのおぞましい考えを一旦、消した。だが、脳にはこれから沢山の血が流れる事を予言するビジョンが鮮明に見えていた。こうなってしまったのも、その役割をオレに指名しした、彼の性かと今ならなんとなくだけど、分かる。彼は私に確かに居場所をくれはした。だが、貴方の仕事は、精神の病に苛まれた、彼等を理解する事です、そう言った。 その言った当人はと言うと、自分が彼を追い詰めてしまったかもしれないと自責の念に駆られて居た。 これから大量の血の雨が降るー。  僕は、自分が保てなくなっていた。 人間がちっぽけなゴミに見えた。あんなにオレを馬鹿にした奴等も、人である事を失った僕は、もはや、捻り潰すだけの蟻だった。殺すしかもはや、手段はなかった。差別と迫害、ヘイト、異物を受け付けない、普通の人々は、彼からすれば当然の報いだった。追い詰められた彼は、もはや自分の良心すら、見失っていた。 彼が陰湿な虐めにあった、それだけの事なのに、それだけの事で、彼にとっては、自分という人格が引き裂かれた、トラウマだった。 弱さの為、庇ってくれる人達はいたが、根本的に彼自身が、自分のされている事を、記憶から消している為、守ってくれる人が居ない間は、彼はその場で、ずっとされるがまま、だった。記憶が消されているから、その無惨さの痛みから逃れるために、切り離した人格は、後でしっぺ返しの様に彼の心をむごたらしく、エグる様に、掻きむしった。 胸が焼ける様に熱い…彼は酷く、自分自身が興奮しているのを認めた。 気づくと、自分の左手が、スマホを持つ手が、自分の右手で書く圧に力が入りすぎて、その後、僕の左手は、破壊された。その時に、彼女達と全く同じ傷跡が出来た。 僕は今迄、貴方達に負い目を感じていたけれど、貴方の心の痛みが、私の心を救わずに、手放してくれた時、貴方は切る自由さえ、奪う、見たくないと言う理由だけで、キレた私を、必要ないと思ったんです。普通ではなかった。 僕達は、お互いを傷つけあってばかりいた。その傷が、貴方の生きる意味なら、私にとって、ここに込めた意味は、拒絶だった。僕ら、友達でもなんでもない。 「何も悲しまなくて良いよ。だって、貴方の傷ではないのだから。」 彼女はそう言って、僕を救ってくれました。
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