描く

1/1
前へ
/290ページ
次へ

描く

悔しかったら、物語を作る。私はそうやって物事を処理してきた。自分のことを、認めさせたかった。 相手が気に食わないなら、内部にいる貴方に、この場で打ち負かす、ある意味脳内戦争。 僕は、そんな妄想を続けていた。 怖い奴だな、気をつけろ。 ある日、昔の先輩に唐突にそう言われて、僕は一瞬、固まった。 な、何を言ってんすか? 本当に誤解される。辞めておけ。 な、なにを? 尚も迫る彼に僕は動揺した。 なんでそんなに周りに対して敵対的なんだ?お前、そんなんだとそのうち誰も相手にしなくなるぞ? それは… 嫌われたくないはずだ。前にもそう言った筈だ。何してんだ?おっかない。お前、怖いぞ? 訝しげに言う彼には、僕が威張って見えたらしい。 ある日の事、僕は自分より年上な彼に無尊な態度で、冷め切っていた。 多分、じれったかったんだ、きっと。毎日、ゆとりのない日々で、そんな気の抜く暇もなかった。昔みたいに、寄り道や道草もなく、時間割り通りに、目一杯仕事にかかりきりな毎日。それは、人も変われば担当も変われば、そう言うあの頃は良かったみたいな、そんな愚痴も抱く。 あんまり、苛々してると、そのうち、嫌になってアイツやめるぞ? …まだ、オレのことがわかってない。 …わかってやるんだろ? … あまり、イライラするな、時間がないのはお前だろ? …… たしかにそうだ。オレには時間がない。 何に焦っている? …生きてる実感がしない事がしない、無感動な日々に。 …寝ろ。アホ。 彼は呆れた様にそう言って、かえっていった。 僕は本当に夢に対して、焦っている。夢は、叶えたい。 自分が生きていると感じるまで、イキイキと描く物語達。それが、僕の意味だから、大切にする。 読み飽きた本は潔く、処分した。 必要な本は、えっちな本で、真面目な本は、無味乾燥な味がした。 それが要らない本だ。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加