3.束の間の雑務の合間に

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3.束の間の雑務の合間に

こうして絶え間ない日々の雑務に囚われていると、自分自身が何かとんでもない過ちを犯している事に気づかざるを得ない。こうして、貴方のために祈っている私の事なんか、忘れてね?私は貴方のために生きることしか考えられない。 澤田光希は、そうやって、祈る当てもない彼の事を案じていた。 何かが、僕の前に現れて、僕の心を奪っていく。 その度に悲しい涙が彼の頬をつたう。 "殺して…" 一人うづくまりながら、彼はまだ、出逢う事すら想像がつかない、遠い未来の道末に、この世界が僕を地獄に引きずっていくのを確かに見た。 この世が地獄みたいに見えた彼にとって、それは冗談なんかではなく、本当にこの世界に連れ戻される感覚が強くトラウマになった。 次の敵、次の殺意、そして、次の弱さを孕む因子ー。それを"守れ"と言われた。彼は、自分が彼らを守る為に闘っているのだ、と使命に駆られた。それが、まさか、普通に生活をして、普通の経済力で、闇に呑まれた人々を、マスメディアが、悪だと断定して、攻撃する、過去の生い立ちを無視して、叩き潰している、コメンティター達の引き攣った顔、ピリピリとした空気の中、その肥大化した憎悪が、人々を扇動し、人を人が裁く、そんな権限を言い出した。人間を人間を処刑する、人民全てを怒りの渦に巻き込まれて、悪意を憎む、その穢れなき市民の声。その、一人一人だと彼が、自覚するのに随分長い時を要した。 彼は想う。"これから、出逢うその、安倍川慎之介と言う悪鬼は、何を僕に言いたいんだろう?その行く末に、僕は何を破壊すれば良いんだろう?"答えなき闇に全てが呑まれて行かない様に、僕は闇の中、叫ぶ。蠢く(うごめく)闇の彼方に追いやられた、彼が何をこの世界に見出すか、その価値を見出す為に。
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