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獰猛(どうもう)
自分がその読み方をねいもう、と読み間違える。
しかし、獰猛そう読んだ。
自分には未だに信じられないが、自分の性質がきっと二重人格だ、そうだとするなら腑に落ちる瞬間が有る。
だけど、自分の普段がとても穏やかな静かな優しい声だ。
それがガラリと変わる時、僕は自分の声がドス黒く、全然違う野太い声に代わって居た。
誰かが、ぼくに危害を加えた場合に於いて、僕は自分ではない人間になってしまう。それは多分昔、僕を追い詰めた人間の脳の内部に蓄積された加害者の内部なのかもしれない。なんて、僕はそう捉えるしか今なす術はない。
精神的に不安定な時期、夢に何度も何度も現れて、もう終わりだ、お前の秘密は全てバラす、そう何度も何度も脅して居た。
夢というのは、この世界中の世界に住んでいる人々と無意識化で繋がっている。だから、其れは不可能な事でない。そんな懸念が有った。
だからー
余計、不安になった。
彼が今も生きている場合、僕の隠された秘密、彼の友達だった弟分に危害を加えている僕は、其れを揺すりのネタにされて、脅迫される鴨になってしまう。金品の催促をさせるつもりか…
…考えすぎだ。やめよう。僕は布団に入り、監視roomに引き篭もる。暫くすると、ようやく、鮫島英嗣が現れ、僕に促した。
「カネなんかで、オレを支配出来ない」
そんな事は分かっています。僕は、この世界の助けを求める声が聴こえているだけです。だから、どうか御警戒なさらないでください。
「フン、信じるか」一瞥し、彼は肩肘をつきながら、遠くをボンヤリ眺める。
自分には人殺しの過去があり、それはあんまり、言いたくない前科なんだ。
「マァ、勝ってるわ、今のところ。そのうち、また潰しに行く。気長に待ってろよ?」
なんでもない、そう彼は想いながら、この街に自分の意味が見出せない。其れはきっと、僕が此処に居たくないからだけかも知れない。それだけに過ぎないのかも知れない。
鮫島は、破滅の道に歩む日系アジア系のマフィアだった過去があり、現在は地道にカタギの仕事に就いている。
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