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ひょんな事から、オイラは死神と知り合った。
そして、病人を治す、すごく簡単な方法を教わった。
それは、まず病人の足元に死神がいることを確認してから、
「ほんだら、ほんだら、ぐるぐるぽんの、ぱー」
と唱えるだけで、その死神を消すことができる。
すると病人はムックリ起き上がり、全快状態となる。
ところが、病人の枕元に死神がいた場合、次の丑の刻(午前二時頃)に、その病人から生気を抜こうとしているから、消せない――つまりお手上げってコト。
ところがところが、最初の患者から、なんとなんと死神は枕元にいた。
が、オイラは必死に考えて、死神を消す方法、を思い付いてしまった。
患者の家族が、五千万円を払うと言ったためだ。
どうやったかというと‥‥
ベッドを持てるような人物を四人、ベッドの四角に待機させた。
そして死神が気を抜いてベッドから降りた午前一時頃、オイラの合図で、その四人がベッドを少し浮かせて半回転させた。
つまり頭が向いていた方向に足がきたのだ。
死神がベッドに戻ったその瞬間、オイラは、
「ほんだら、ほんだら、ぐるぐるぽんの、ぱー」
死神は呆然としたまま、見事に消えた。
その夕方‥‥
浮かれているオイラが、料亭から出てくると――
そこに待っていたのは、知り合いになった死神だった。
死神は睨みながら、
「バカやろう。あんな事しやがって。こっちへ来い」
オイラを不気味な地下の穴に連れ込んだ。
そこには何万という、火のついたローソクがあった。
死神は、これは全て人間の寿命だと言った。
そして、チョロチョロと消えそうなのが、オイラのローソクだと言い、もうすぐ消える。消えるとオマエは死ぬよ。
オイラが泣きながら、
「たのむお願いだ、助けてください」
すると死神は、足元に落ちていた半分くらいのローソクを拾い、
「詳しい事を教えてなかったから、一回だけチャンスをやろう。
このローソクに火を移してみろ。上手く移せたら助かる」
オイラは、チビたローソクの火を大きなローソクに移そうとしたが、なかなか火が安定しないし、チビていて持ちにくかった。
オイラはヤケと熱さで、火が消えそうなローソクを投げた。
そのローソクは偶然、死神の方へ飛んでいった。
死神は思わず、ローソクを受け止めた。
が、その火は、死神の着物に燃え移ってしまった。
「よーし、これなら落ち着いて火を移せる」
オイラは、らくらくと大きなローソクに火を移した。
死神は、だまって燃えながら消えた。
オイラは、自分の寿命になった半分のローソクを、簡単に消えないように、奥の方に置いた。
すると、さっき死神がいたところに、不気味な怪物がいて、襲って来たのだ。
オイラは必死で逃げたが、その怪物にガブリ! と背中をカブられた。
そのための激痛を感じながら、オイラはなんとか地上に出ようと、かなり長い暗闇を登って行った。
そして、ポッと出た所は、料亭の前だった。
見ると、そこに待っていたのは死神だった。
「バカやろう。あんな事しやがって。こっちへ来い」
「えー、またー? そんのイヤだー!」
オイラは、くずれるように座り込むと、号泣するしかなかった。
――おしまい――
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