『そこには?』2:死神B(ホラー)

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ひょんな事から、オイラは死神と知り合った。 そして、病人を治す、すごく簡単な方法を教わった。 それは、まず病人の足元に死神がいることを確認してから、 「ほんだら、ほんだら、ぐるぐるぽんの、ぱー」 と唱えるだけで、その死神を消すことができる。 すると病人はムックリ起き上がり、全快状態となる。 ところが、病人の枕元に死神がいた場合、次の丑の刻(午前二時頃)に、その病人から生気(たましい)を抜こうとしているから、消せない――つまりお手上げってコト。 ところがところが、最初の患者から、なんとなんと死神は枕元にいた。 が、オイラは必死に考えて、死神を消す方法、を思い付いてしまった。 患者の家族が、五千万円を払うと言ったためだ。 どうやったかというと‥‥ ベッドを持てるような人物を四人、ベッドの四角に待機させた。 そして死神が気を抜いてベッドから降りた午前一時頃、オイラの合図で、その四人がベッドを少し浮かせて半回転させた。 つまり頭が向いていた方向に足がきたのだ。 死神がベッドに戻ったその瞬間、オイラは、 「ほんだら、ほんだら、ぐるぐるぽんの、ぱー」 死神は呆然としたまま、見事に消えた。 その夕方‥‥ 浮かれているオイラが、料亭から出てくると―― そこに待っていたのは、知り合いになった死神だった。 死神は睨みながら、 「バカやろう。あんな事しやがって。こっちへ来い」 オイラを不気味な地下の穴に連れ込んだ。 そこには何万という、火のついたローソクがあった。 死神は、これは全て人間の寿命だと言った。 そして、チョロチョロと消えそうなのが、オイラのローソクだと言い、もうすぐ消える。消えるとオマエは死ぬよ。 オイラが泣きながら、 「たのむお願いだ、助けてください」 すると死神は、足元に落ちていた半分くらいのローソクを拾い、 「詳しい事を教えてなかったから、一回だけチャンスをやろう。 このローソクに火を移してみろ。上手く移せたら助かる」 オイラは、チビたローソクの火を大きなローソクに移そうとしたが、なかなか火が安定しないし、チビていて持ちにくかった。 オイラはヤケと熱さで、火が消えそうなローソクを投げた。 そのローソクは偶然、死神の方へ飛んでいった。 死神は思わず、ローソクを受け止めた。 が、その火は、死神の着物に燃え移ってしまった。 「よーし、これなら落ち着いて火を移せる」 オイラは、らくらくと大きなローソクに火を移した。 死神は、だまって燃えながら消えた。 オイラは、自分の寿命になった半分のローソクを、簡単に消えないように、奥の方に置いた。 すると、さっき死神がいたところに、不気味な怪物がいて、(おそ)って来たのだ。 オイラは必死で逃げたが、その怪物にガブリ! と背中をカブられた。 そのための激痛を感じながら、オイラはなんとか地上に出ようと、かなり長い暗闇を登って行った。 そして、ポッと出た所は、料亭の前だった。 見ると、そこに待っていたのは死神だった。 「バカやろう。あんな事しやがって。こっちへ来い」 「えー、またー? そんのイヤだー!」 オイラは、くずれるように座り込むと、号泣するしかなかった。 ――おしまい―― 、
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