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ならば夢だと思うのが妥当ではある、が。
それはそうと、このやたらめったら派手で豪華な部屋に、見覚えがあるような気がするのは何故だろう。
――おおおおおちちゅけよ私ぃ!そうだ、これはきっと夢。夢なんだからどんな突拍子もないことが起きてもおかしくなんかない!そ、そうさ、だったら焦るこたないっしょ、うん!!
無理やり自分を納得させつつ、まずは窓に近付いてみた。そんな気はしていたが、やはりここはホテルではなさそうである。建物の三階くらいの高さ、だろうか。向こうには綺麗な噴水のある庭と、高い白い塀、その向こうに広がる広大な森が見える。
探せども探せども同じ。ホテルにありがちな駐車場の類も、道路も、別の町の建物らしきものも見つからなかった。空は朝香の混乱など知ったこっちゃないと言わんばかりに青々と晴れ渡っている。
――ホテル、じゃない?ていうかホテルだとしてもそんなところに何で泊まれてるの私って話だけど。
気になるのは、この窓の向こうの景色も見覚えがあるような気がしてならないということ。自分は此処に来たことがあるのだろうか。あるいは、写真か何かで見たことがあるのか。
「え」
ふと、一歩後ろに下がった拍子にちらりと見えたもの。はらり、と視界を過ぎった金色の髪と、それから窓にうっすらと映り込んでいる己の姿。
「は、はぁぁっ!?」
思わず声を上げて気づいた。というか、何故目覚めて第一声、叫んだときにわからなかったのか。朝香は慌てて鏡台駆け寄り、あんぐりと口を開ける羽目になるのである。
美しい金色の髪。元の世界の自分よりハリ・ツヤのある若くて白い肌に、真紅の瞳。勝ち気そうな顔をした、十七歳くらいの少女。それはどう見ても、現代日本で二十八歳OLをしていたはずの、朝香の姿とはかけ離れたものだった。そればかりか。
――……マジで?
見覚えがありすぎる。
薄ピンクのネグリジェを着ていても見間違えるはずがない、なぜならその姿は。
――な、な、なんで!?何で私が、コーデリアの姿になってんの!?
あのゲーム、“ロイヤル・ウィザード”の主人公、コーデリア・ウィルビー。
朝香はなんと、そのコーデリアの姿に変わってしまっていたのだ。
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