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朝香の推しは死ぬ、の法則から彼もまた逃げられなかったというわけで。
「そりゃ、バトル要素あるジャンルならメインキャラが死ぬこともあるって」
朝香の絶叫に、瑠子は苦笑いで返してきた。
「でも、今回は安パイだと思ったんだけどな。てっきり、朝香はジュリアンは推さないと思ってたもん。ケネスとか、そのへんが好きになるかなって。ジュリアン以外は全員生き残るし……なんていうかジュリアンって、最初から最後までコーデリア以外を恋愛的な意味で見る余地のないキャラじゃん?」
「ま、そーね」
「だから、あたしは朝香も萌えないかなって思ってたの。その、腐女子的に見ても夢女子的に見ても、美味しいキャラじゃないじゃない?」
彼女が言いたいことはわかる。
腐女子、は基本的に男キャラ同士の関係性に萌えて、その恋愛を妄想して楽しむようなオタクを指す。少年漫画の主人公とライバルでも萌えるし、少女マンガの兄弟キャラでも萌える。実際恋人ではないキャラを恋人に見立てて影でこっそり愛するというのが珍しくない。裏を返せば、公式で女の恋人がはっきり出てきて、ベタ惚れというのがわかりきっている男キャラはあまりうま味がないのだ。何故なら、妄想の余地が少ないから。ヒロインを捨てる、別れる、という公式にはまずやらないような行動をさせないと、別の男キャラとの恋愛に発展させられないのである。まあそれはそれ、パラレルワールドとして楽しむことができる者もいるにはいるが、他の“恋人がいない”キャラを比べると妄想しにくいのはまあ間違いあるまい。
実は、夢女子に関しても同じことが言えるだろう。夢女子は、イケメンキャラと自分、もしくは自分の代理人に見立てたオリキャラが恋愛するのを想像して楽しむオタクを指すからだ。やっぱり同じ理屈で、そのイケメンくんに既に公式で女の恋人がいるのは非常に都合が悪いのである。なんといっても、邪魔になる。恋人が公式でおらず、ヒロインの存在にストレスを感じないような男キャラの方が妄想しやすく、夢女子といってもうまみがあるのは事実と言っていいだろう。それはそれ、想像の世界ではその世界の彼女なんかいない!奴の恋人はあたし!として萌えることができる猛者もいるにはいるが。
「……いーんだよ、別に。だって、私は今回ジュリアン単品で萌えてんだから」
瑠子の言葉に、朝香はフライドポテトをぱくぱくしながら言った。安上がりと言いたければ言え、ビールのお供としてやっぱりフライドポテトは王道である。
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