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<1・Grumble>
悪役令嬢、とは。
ライトノベル、ゲーム、アニメ、漫画なので人気のジャンルの一つ。ヒロインをいじめたりして最終的には断罪され、処刑されたり追放されたり婚約破棄されたりする悪役のお嬢様のことを一般的には指す。元々は嫌われ役のテンプレートとして存在した役どころだが、近年はその悪役令嬢に一般人が転生して運命に振り回されたり、あるいや悪役令嬢が逆に主人公や婚約者にやり返すという趣向が人気を博し、一大ムーブメントを築いている。
ただし、当然のことながら。悪役令嬢本人が、自分が“そう”であると自覚しているケースは少ない。異世界転生した一般人が、というのはそもそもリアル世界で“その悪役令嬢が出てくるライトノベル”なんかを知っているからこそ認識しているのであって、元々の悪役令嬢が自分がそうだと思っていることはまずないと言っていいだろう。
多くの場合、誰もが自分こそが正義だと信じている。悪役もまた、自らが正しいと信じて悪行を成していることが殆どであり、そういった者達にとってすれば主人公サイドこそがヒールだ。
そう、だから。
「コーデリア、単刀直入に言うよ」
ウィルビー侯爵家令嬢――コーデリア・ウィルビーもまた。自分がまさか、悪役令嬢と呼ばれるものであるなどとはまったく思ってもみなかったのである。
「君との婚約を、解消したいと思っているんだ」
大恋愛の末結ばれるはずだった婚約者――ジュリアン・ミューアに。突然、婚約解消の意思を通達されるその日までは。
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