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「あれ、今日は汗の日か」
空を見ながら、少年、麻餅 餅田は雨宿りならぬ汗宿りを一人してした。
そんな餅田の周りには、何人もの子供たちが空を見つめて立ち止まっている。
餅田とは関係ないものの、彼らもまた、餅田と同じく傘を持ってきてくれる人を待っているのだろう。
「まだかなー、まだかなー」
そう、餅田が何度も言っていると、空の中から影が見えてきた。
「あっ、来た!」
餅田はそこに指をさしながら、空から父親が飛んできたことを知らせる。
傘を差しながら降りてくるその姿は、まさに父親としての在り方そのものだろう。
他の父親にも見習って欲しい、そんなことを餅田は今思っているに違いない。
そう思えるほどに餅田は飛んできた父親に釘付けだ。
だが、ただ一つ気にかかることがある。
あんな速いスピードで飛んで来て、よく傘の重心がブレないものだ。
その姿、まさに石像である。
着地の瞬間、そこに出来ていた水、では無く、汗溜りを弾いて、餅田に汗がかかる。
そして降り立った父親は、餅田に傘を差し出した。
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