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ドアを開けると、カラコロと軽いベルの音が鳴った。店中は思っていたよりも小ぢんまりしている。カウンター席が4つと、窓側にテーブル席が2つ。オレンジ色の柔らかなランプの明かりが、大きな窓から差し込む太陽とマッチし、店内は温かく仄かな光で満ちていた。
混雑しているかと思ったけれど、お客さんはカウンター席に座る一人の女性だけだった。他に店内にいるのは、カウンターの中で食器を洗っている男性店員のみ。「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」との声に従い、窓側の席へ向かった。
「ご来店ありがとうございます。メニューがお決まりになりましたら、そちらのベルでお知らせください」
メニュー表を持ってきてくれた店員さんの顔をちらりと見る。こげ茶色の髪に神秘的なグリーンアイ。入店したときは中の様子に夢中であまり気にしていなかったけれど、店員さんは人目を惹くような美しい容姿をしていた。透明感のある肌に、まっすぐ通った鼻筋、ぱっちりと大きな瞳。穏やかな表情と柔らかい口調から、優しそうな人だなあとも感じた。実はモデルやアイドルをしているのだと言われても頷ける。
店員さんが立ち去った後、メニュー表を二人で広げる。苺のショートケーキに、チョコレートケーキ、モンブラン。甘いものが中心のメニューだ。
しばらく眺めた後、ケーキセットを注文することにした。お好きなケーキが一つと、紅茶のセット。藍も同じものにしたらしい。
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