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高校を出た後は、大学にも行かずに逃げるように人を避け続けた。
たった18年間生きてきただけで、自分と言う人間は嫌という程分かってしまった。これほど愛されて、恵まれて、それでも満足しない浅ましい生き物。ひとつでも与えたらいけない。ひとつでも与えたら、もっと、もっとと手を伸ばす馬鹿な生き物。
「優斗って、どっか壁があんだよね。」
そう友達に言われると、ほっとした。
自分の陰部を興奮させる事を事極く避け、自慰だってした事がない。
だから……だから、今。本当にどうしたらいいのか分からない。
跳ね除ければ、直ぐに解放されるこの柔らかな檻を壊せずに、固く身を小さくして時間が過ぎるのを待つしかなかった。
それでも背中から伝わる温もりが心地よく、吐息に合わせて上下する僅かな振動にも神経が集中していく。
小さくない、しっかりと男のこの身体を、 さらに大きな身体が覆い包む。硬い骨同士が重なり隙間を埋めるものも筋肉で、柔らかい訳でもない。同じものと同じものが重なっていて、臀部にのみ感じる柔らかさと温もりが艶めかしい。
…………抱きついてみたい。どうせ相手は眠っているのだから。抱きしめ合う温もりを、1度くらい知ってみたい。
そんな考えが脳裏に沸き起こり、堪えきれずに離れようとすると、また腕に引き戻される。
「辛いのか?かせ……」
後ろから抱きしめられたまま、陰茎を包み込まれる。
「………っ!!」
「した事ないのか?抜き合いとか、学生でやるだろ?」
え?そう!?これも普通なのか??慌てる事じゃない!?
思考が迷宮入りして、目が回るとはこういうことを言うのだろうか。わけも分からないうちに、柔らかく温かい温もりに包まれて漏れ出そうになる声を防ぐため、両手で口を抑えた。
「……っひ……」
擦れそうな摩擦が全くなく、ヌルりとする感触や、クチュクチュと言う音全てが鳥肌となって、赤く染め感度を上げる。
「大丈夫。悪い事なんかじゃない。」
低い声が最後の理性を打ち砕いていく。
「……っん……っ」
何とか首を振るというのに、
「大丈夫。もうすぐ終わるから。」と楽しげな声と共に、柔らかな唇がうなじにチュッと音を立てた。
見開いていた目を、今度は眉間に皺が寄るほどキツく閉じたのと、痺れさせるような快楽が全身を巡ったのは同時だった。
打ち付けるような鼓動に意識まで飲まれる。
再び瞼を開けるのは、約束された6時に優しい声で起こされる時だった。
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