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お嬢さまはいつも……
「おやおや、どうなさいましたか? お嬢さま」
「どうなさいましたかじゃねーよ!! 毎日毎日恥かかせやがって!! 弁解するこっちの身にもなりやがれこのピーッ(自主規制)」
そこには、学院で姫薔薇さまと敬われ、優しい微笑みを返す淑女はいなかった。人目を気にせず、惜しげもなく罵詈雑言を吐き出す姿は、その辺のギャルも真っ青な悪鬼そのものである。
だが、むしろその姿を前に執事はニヤニヤと楽しそうに口角を吊り上げる始末だ。
「ふむ……どうやらピエロはお気に召されなかったご様子」
「そういう問題じゃねーんだよ!!」
「では次はコスプレと洒落込みましょうか。お嬢さまのお好きなアニメのタキ〇ード仮面など如何でしょう?」
「聞けよカス!! つうか過去形だから!! ガキの頃の話だから!! 大体予告したらサプライズもへったくれもねーだろ!!」
「おや……お嬢さまはサプライズをご所望ですか?」
いばらの顔が一瞬凍り付いた。
そこから一転、瞬く間に顔中に熱が広がった。普段の優雅な姫薔薇からは想像もつかない有様である。
「ち、ちが……っ! そんなんじゃ」
「かしこまりました。明日はお嬢さまの度肝を抜かします故、どうぞ楽しみにお待ちください」
「余計なお世話だから!! 絶対待たないから!!」
そう。あんなお出迎えをされたところで恥をかくだけだ。迷惑もいいところだ。
だけど、不思議なことに、こうして執事と掛け合った後は、いつも肩が少し……ほんの少しだけ軽くなっている。
(足元見やがって……っ!)
明日はどんな風に迎えに来るのだろう。
一瞬、そんな馬鹿なことを考えてしまった自分を、盛大に殴りたい姫薔薇さまであった。
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