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「ねぇミカ、俺ハチに何かしたかな?」
「気付いてないと思ってた」
「え! その反応……やっぱり何かしちゃったんだ……、」
ミカ――美和と椎名は、珍しく先に集合場所に来ていた。昼休みに集合するスタイルの為、稀にこういうことがあったりする。基本は、椎名が一番最後になるが。
「いや、そういうことじゃなくて。わざと嫌がらせされてるのに気付いてたんだなって」
「……気付くよ。だってハチいつもと違うから……俺、何か怒らせるようなことしちゃったのかな……でも、特別思い当たる節もないし……でも、もしかしたら無自覚にしてるかもって……」
弁当も広げず、二人はハチ――栄都を待つ。美術室のカラフルな壁にそぐわない、美和の溜息が落ちた。
「怒ってるとこ見たいんだと」
「え、怒ってるとこ? 俺が?」
「そう」
椎名の瞳が、思考を反映して右往左往する。だが、長くは続かず、すぐに大きく見開かれた。
「なるほど! じゃあ怒らせてた訳じゃなかったんだね! 良かったー、嫌われてたらどうしようって思ってた!」
「寧ろキノコがハチを嫌ってなかったのがすげぇわ」
「嫌わないよ。ハチのこと好きだもん」
「優しすぎ。まぁ、てことだからさ、いい感じに怒ってやってよ。振りでもいいし」
「うん、それなら……」
頬杖をつきながら、美和は椎名を見遣る。そんな椎名は納得したかと思いきや、突然固まった。
「………………ところでさ、怒る演技ってどうやるの?」
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