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「なんで!? ありえないんだけど! 大体さキノコは!」
雨雲の立ち込めた屋上に、声を響かせる。本日は、自分が理不尽に怒れば相手も反論してくる説でトライ中だ。
「え……え? えっと……」
キノコはと言うと、急に怒り出したからか酷く戸惑い、助けを求めるような目でミカを見ている。ミカは首を傾げて終わっていたが。
「言わせてもらうけどキノコは分かってないんだよ! 俺がどういう」
扉の開く音が声を消す。よく見る女子たちが入って来て、当然のごとくキノコに近付いてきた。本日も見事に撃沈だ。
「探したー。さっき先生が呼んでたよ。頼みたいことがあるんだってー」
「ありがとう、すぐ行くね」
気まずそうにごめんねとだけ言い残し、ばつが悪そうに屋上を出て行く。相変わらずの読めない反応に、次は俺が首を傾げてしまった。
「言い過ぎじゃね?」
ミカの叱責に、小さく肩が竦む。
「……でもよくあるじゃん、意味分かんないこと言われたら逆切れするパターン……」
「知るかよ。てか、色々やりすぎ」
「その通りです……」
核心を鋭く突かれ、がっくりと肩を落とした。ただ怒る顔が見たいだけなのに、なぜこんなに疲労困憊しているのか自分でも分からない。
「疲れるならやめれば良いのに」
「そうなんだけどさぁー! ここまでして止めたら悔しいじゃんかー!」
「お前なぁ……」
だけどそう、はじめてしまった以上、ここで止まれないのが俺なのだ。
それからも、背後から突然ぶつかりに行ってみたり、黒板消しトラップを仕掛けた上、犯人であることを自己申請したりした。だが、効果は微塵もなかった。
怒っているような微妙な気配はあったが、それが怒気なのかは判断できなかった。
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