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こんな結末があるなんて!
キノコが一人になるタイミングを、物影に隠れて遠くから窺う。
本日のプランは、ラジコンカーを足場にぐるぐる疾走させようといったものだ。もちろん後で走って出て行き、俺がやりましたと自白する予定である。
ただ、正直もう自分でも何をしているのか分からなくなってきた。
「よしっ、そろそろ発進だ……」
リモコンを構えた瞬間、上着の襟が引っ張られる。
「邪魔すんなよミカー」
振り向くと、そこにいたのは数人の女子たちだった。よく、キノコを探しに来ている女子もいる。
そんな女子たち全員が、なぜか鬼の形相だった。
「あんたさ、最近椎名くんに色々嫌がらせしてるでしょ! 私たち知ってるんだからね!」
リーダーらしき女子の第一声を筆頭に、他の女子たちが一斉に叫びだす。最低、どクズ、椎名君が可哀想……と、様々な罵詈雑言を突きつけられた。
「いや、あのですね、色々やってたのは……」
「は!? あんた言い訳するつもりなの!? 本っ当に最低なゴミ野朗なんだけど! 椎名くんに謝りなさいよ! 土下座よ、土下座!」
「いや、だからさ。本当に訳があって。一度話を聞い……え」
瞬間的に起きた出来事に、唖然とする。目の前には逆さまのバケツを持った女子がいて、俺はなぜか全身を水浸しにしていた。
――あ、これ本気で怒らせてるやつだ。
状況を前に、今さら事の重大さを理解した。キノコを怒らせるはずが、まさかファンの女子達を怒らせることになるとは。思いもしなかった。
「……ちょ、ちょっと待って本当に事情があるんだって……話せば分かるから……」
「まだ言い訳すんの!? あんたに色々されて椎名くんがどれだけ嫌な思いをしてたと思ってんのよ!」
発言した女子の手が、大きく振り被られる。数秒後の未来が脳内に流れ、恐怖で身が縮まった。
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