孤独な正義

2/12
1293人が本棚に入れています
本棚に追加
/1476ページ
 大学に進学してしばらく経った頃、構内を移動中、目の前の学生が何かを落としていった。それがガムの包み紙だと気づき、前を歩く学生を呼び止めた。  ゴミを落とした、と指摘すると、「捨てたんだよ」とうっとうしそうに言われ、それに腹が立ち、どうしてゴミ箱に捨てないのか、と問い詰めた。相手には連れがいて、二人とも僕より背が高く、態度も高圧的だった。 「そんなにゴミ箱に捨てたいならお前が捨てとけよ」  と、にやついて僕の肩を軽く突いた。軽く、というのはあくまで本人の力加減の問題で、僕の痩せた体にはそれなりの衝撃があった。よろめいて、尻餅をつく僕を、押した本人は一瞬驚いた顔で見下ろしていたが、すぐに手を叩いて大笑いを始めた。  一体何が楽しいのか。大学生にもなってこんなことが楽しいなんて、小学生に戻ったらどうだ。  尻餅をついたまま吐き捨てると、二人が笑うのをやめて怒りを露わにした。暴力を振るうつもりだと察し、息を呑む。  そのとき、僕の腕を誰かが引いた。後ろから抱え上げて、僕を立たせてくれた人物がいた。 「大丈夫?」
/1476ページ

最初のコメントを投稿しよう!