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僕は今まで友人を持たなかった。面倒な性格だからだ。倉知もきっと、面倒に感じると思う。だから、無理に友人をやらなくてもいい。
そう突き放すと、不思議そうな顔をした。
「友達って自然になってるもんだよね」
自然に友達になるという感覚が、僕にはわからなかった。戸惑う僕に、倉知は少しずつ距離を縮め、徐々にいろんなことを話すようになった。
家族のこと、高校での思い出や、恋愛の話、将来の夢。今まで、他人のそんな話には興味がなかった。でも、誰かのプライベートを共有するのは、妙に面白く感じた。
次第に自分のことを話すようにもなり、倉知は僕の、初めての友人になった。
その友人が、道を踏み外そうとしているのを黙って見てはいられなかった。
倉知には好きな人がいて、高校卒業と同時に一緒に暮らすようになったそうだ。倉知は真面目な奴だし、きっと結婚を前提にした相手なのだろうと思っていた。
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