孤独な正義

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 よく惚気話を聞かされ、「加賀さん」と相手を呼ぶ嬉しそうな表情を見ていると、幸せなんだろう、と微笑ましく感じていた。  でもその「加賀さん」が男だということが、後日判明した。  昼食をとっていた定食屋でたまたま遭遇したのだ。  どうして。男同士だなんて、どうして。  倉知は真面目で、賢い。将来を決めて、信念を持って大学に通っている。とりあえず大学を出ておけ、という無計画な他の学生とは違う。  それなのに、どうして同性と付き合うなんて、危険な真似をするのか。 「男の人、だったんだね」  定食屋を出て大学に向かう途中でつぶやいた。倉知は「え?」ととぼけた声を出した。 「加賀さんって、男の人だったんだ」  もう一度言うと、倉知の足が止まった。 「あ、いや、その」  狼狽する様子から見ると、僕にばらす予定はなかったらしい。 「いつから付き合ってるの?」
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