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 彼が何か言いかけた時 「なんだ。葛城君、外に行ってたのか?」 うちの教授、彼の上司が前から来た。  彼は一瞬焦ったようだったけれど、すぐに笑顔を作った。 「はい。前に言ってらした蕎麦屋さんに。一人で行き辛かったので彼を誘って」 「そうか。美味かったろ。あと、あれ、ありがとうな、資料。大変だったろ」 「いえ。……彼が、手伝ってくれたので」 「おう。鳴瀬ご苦労様だったな。いや、今週中でいいって言ったのに早く貰えて助かったよ」  ……ん?  ……今日、火曜日だけど……。 「じゃあ、俺これから昼行ってくるから」 「行ってらっしゃい」 「……失礼します」  教授の背中を見送ってから、俺は言った。 「……あれ、急ぎでなくて良かったんですか?」  彼は、罰悪そうに眉を寄せる。 「ごめん。……嘘をつくつもりは無かったんだけど……」  思い返せば、確かにこの人が急ぎと言ったわけじゃない。  もうひとつの事務の仕事が急ぎで、というから勝手にこれもそうなんだと俺が思っただけだ。  申し訳なさそうに彼は言った。 「……出来る範囲で、って言ったろう?本当に、全部じゃなくて空き時間に数冊手伝ってもらえるだけで良かったんだよ」  意味が分からず首を傾げていると 「その……同じ学生でもないのに、僕がいきなり昼に誘うのも馴れ馴れしいだろう?だから、口実になるかと思って……」 蚊の鳴くような声がした。
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