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ふと、さっき自分が散らした花と子供たちの装束が同じ色をしていることに気付いた。
「……その金木犀の、か?」
子供のひとりが、笑みを浮かべる。
「あの方は、よく私たちを誉めてくださいました。この季節になるとお出ましになられては、良い香りだと」
「そうか。……なら、あの時は悪かったんだな。俺のせいで枝折らせちまって」
「別に、貴方に差し上げたわけではありません。あの方に差し上げたのです」
つん、と澄ました顔でもうひとりが言った。
どうやら顔は同じでも個性は違うらしい。
「だとしても、俺は嬉しかった。ありがとうな。……けど……それならやっぱり、あれは夢じゃなかったってことで……今の、あの狼みたいなのがここの主で、俺が会った『葛城様』なんだな?」
子供たちの沈黙は肯定の意味に取れた。
ここは、現在の地図では地名がそのまま神社の名前になっているが、明治前の古い資料では、地名とは異なる葛城神社という名で記されている。
同じ頃に、祭神も一言主から別の神に書き換えられているから、元々の名は葛城神社、祭神は一言主というのが事実なんだろう。
その一言主を信仰していたのが、蘇我氏や物部氏より古い時代に栄えて滅んだという豪族の葛城氏だったなんてことを考えると、なんとなく歴史から消された感がある。
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