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深夜零時。
金木犀の枝を手に、あの神社への道を急いでいた。
夕方、例の子供から貰ったものだ。
「これをお持ちなさい。お祖母さまが朝までお目覚めにならないよう、お手伝いしましょう。それとお足元を照らす助けになります」
懐中電灯とまではいかずとも、小さな花が月の光でも蓄えたように淡い光を放つと、茫々と伸びた草や枝も勝手に避けていき、昼間より楽に進めるほどだった。
石段を上った鳥居の両脇にはふたりの子供が狛犬のように控えていた。
「ご無事で何よりです」
「ありがとな。……これのおかげか知らないけど、傷も何とか誤魔化せた」
帰った時、祖母は台所に居たので、血だらけの姿を見られる前に何とか着替え顔を洗った。
傷は思ったほど大きくはなく、絆創膏で隠すと祖母は訝しんだが、木の枝で引っ掻いたと話すと、だからよせと言ったのにとぶつぶつ言われただけで済んだ。
枝を返そうとすると
「お持ちになってください」
と微笑む。
「あの方のお心をお慰めするかもしれませんので」
ふたりは先に立ち、社殿へと導く。
金木犀の明かりが無ければほんの少し先も見えないほど濃い闇の中を歩き、社殿に辿り着くと、二人は閉められた木戸を静かに開けた。
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