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「……あんたの言う通り、俺はあんたの立場も気持ちも分かってないだろうけど、……でも、……あんたが消えることになってもここを守らなきゃいけないってのは分かるし、それは俺が止められるようなことじゃないってのも分かるよ」  す、と指先で撫でても、狼は動かなかった。  頭に手のひらを置いてそろそろと動かすと、黒い針のように見える毛並みは犬の毛より少々硬い程度のもので、近所の犬を撫でるのと大して変わらないように思えた。 「でも……俺は諦めたくないんだ。あんたと離れたくない」  狼は何も言わず、けれど俺の手を嫌がる素振りもなく、好きにさせている。 「……なあ、思ったんだけど。さっきの話。……最初の社と鏡が壊れた時、あんたの意識は消えずにここに残ってたから、あの太刀を依代にしたって言ったよな。……なら今度も、ここが潰れてあれが壊れたとしても、代わりの依代があれば生きられるのか?」 『……なに?』  じろりと狼は俺を見る。 「俺を代わりの依代にできねーか。そしたら、ひとりで寂しい思いさせねーし、狼なんかにならなくて済むんじゃないのか」  俺の手を振り払って、狼は立ち上がり顔を近づけ睨みつける。 『何を言っているか、分かっているのか』
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