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「ねぇ、まりえさん。あなた、お父様とはどういった関係なの?」
堪えきれなくなった私は、部屋で涼んでいたまりえを問い詰めた。
「どういうって、義理の父と息子の嫁ですわ」
絽の着物を着て団扇をあおぎながら、女はふてぶてしい顔をしている。
「ふざけないで、さっき見たのよ。あなたがお父様の、咥えていたところ」
女は団扇を仰ぐのを止めて、ゆっくりと振り返って私を見た。
「……そうなの。見たのね」
はぁ、と女は大きく息を吐いて私をまるで憐れむように見つめてきた。
「だから言ったでしょ、早くこの家を出なさいって。この家は茉莉花さんにふさわしくないわ」
「何を言うの、この家は私の家なのよ! ……出ていくのは、あなたの方だわ」
問い詰めるように言っても、女はまるで知らん顔をしてまた団扇で仰ぎ始めた。
「ねぇ、茉莉花さん。あなた、ご存知かしら? あなたのお兄様、私はあなたと似た香りがするんですって。髪型も同じで、流していると後ろ姿だけだとわからないって。喜んでいらしたわ。どうしてかしらね」
女はまるで、ドラマに出てくる悪女のようにニタリ、と笑う。
「それにね、いつも私を抱く時は必ず後ろからなのよ、あなたのお兄様。名前を呼んでと言っても、マリ、としか呼ばないのよ? 誰を想像して抱いているのかしらね。皇彰家の男だから? 妹に懸想しても、手を出さなかったから許されるのかしら?」
「何が言いたいの、あなたに何がわかると言うの」
自分でも驚くような低い声が腹の底から出る。
「ええ、わかっているのよ。私はあなたの代わりでしかない、なんて。あなたのお兄様が本当に愛しているのは、茉莉花さん。そのことに、気がつかない私だと思っていたの?」
ふふっと妖艶に笑う女は、続けて私に言った。
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