一章 マグナの夢

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一章 マグナの夢

暑さも、寒さも、痛さも、感情も、何も感じない、何も求めない、それが人形……ドールズたちの運命(さだめ) 固定した虚な感情を届けるための動く商品(みせもの) そんなもののために私たちは生きている、人形の命(めい)尽きるまで…… そう造られた(うまれた)ときから育て親の人形から教えられていた、私には感情があるのに 「この体の命(めい)尽きるまで使命を果たす」 それが私たちドールズに与えられし唯一の使命 それなのに私には感情がある、私には感情はいらないはずなのになんでこんな感情の有る駄作人形に造られた(うまれた)のだろう…… 「ラフィネちゃん、ラフィネちゃん!」 「ん……何?」 自分の中の妄想世界に行っていた私はその声で現実世界に戻ってきた 「何?じゃないよ、またボーッとしてたでしょ」 「……うん、ごめん」 「全く……、そうやってボーッとしてるといつか寝るよ」 「馬鹿にしないで、私は人形だから寝ない」 「まぁそうなんだけどさ」 私は糸切り人形見習いのラフィネ、今は多種多様のドールズ見習い生が在籍する「ドールズ学園」に在籍しており、今度の正規ドールズ認定試験に受かれば晴れて糸切り人形として一人前となる そして先程から私と話しているこの人は私と同じく「ドールズ学園」に在籍する劇場人形、言うなればマリオネット見習いのマグナ 数少ない私と同じく、感情を持つ人形見習いでもあり私の恋人 私と同じく今度の正規ドールズ認定試験に受かれば一人前のマリオネットになれるのだが、ドールズ教育者から合格確実とまで言われるくらいの秀才マリオネット見習いらしい 「まぁ、浸る気持ちも解るよ自分だってそうだもん」 「うん……」 「でもさあずっと浸ってても何か変わるわけじゃないからさぁ、考えてるだけ無駄だよ」 「でも……」 「やることは心無い人形たちに合わせなきゃいけないわけだし……まぁ、これ以上は言わないでおくよ」 「うん……、ありがと……」 やっぱり男人形にはわからない私の感情は でもそんなの口にだしたら別れを切り出させられるかも知れない、それだけは嫌だ、折角私と同じ感情のある人形を好きになれたのだから 「それよりもさぁ」 また、妄想世界に行っていた私に唐突に話しかけた その声に反応しマグナの方に目を配る 「今度の正規ドールズ認定試験って、ラフィネちゃんは受かりそうなの?」 「……何回も言わせないで、私だっておふざけでこの学園に居るわけじゃないの」 「そんなに怒らないでよ~、ただ心配なだけだから、ラフィネちゃんっておっちょこちょいでしょ?」 「……揚げ足取らないで」 「ごめんごめん、でも、俺の夢を一番応援してくれてるのはラフィネちゃんだけだから」 「……お世辞はいいから」 「ラフィネちゃんはつれないなぁ~……」 私はマグナの夢を知っている、だからこそ私の中ではある程度高圧的な性格だと思っても応援している、私の恋人としてだけでなく頑張って貰わないとその夢には届かないから…… その夢を応援するために付き合っていることもある と、突如としてマグナが立ち始めた、と思ったら 「俺には夢がある、壮大な夢が」 「……」 何か語りだした 「その夢のためにも、今度の正規ドールズ認定試験の劇を成功させなければならない」 「……」 「そのために……俺はここまで頑張ってきてるんだ」 いや分かっているけど、何故今なの? そう頭の中で考えざる得なかった こういうときのマグナは、ネジが飛んだか、糸が変に絡んだかと思うくらい行動、言動が変になる 「絶対に成功させてやる……」 そうしてマグナは拳を軽く握った そしてマグナの背中の繊細で脆弱な糸が握り拳を作ったことで少し糸が張った (えっと、次の劇の何かですか?恥ずかしいからやめて) 困惑しながらもそう思わざる得なかった 「その時はラフィネちゃんも席で見ててね」 「う、うん……、時間があれば……」 何がなにやらどういうことかよく分からなかったが、とりあえず応援はしてみようと思った こうして少し時は進み、正規ドールズ認定試験本番の日を迎えた…… 一章 終
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