プロローグ

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頼斗の恋愛観は、実はかなり変わっている。 “相手のことをよく知りもしないのに、交際の申し込みを断るのは相手に対して失礼だ” これが、頼斗のモットーだ。 一見するとちゃんとしているように聞こえるが、平たく言えば、 “来る者拒まず、去るもの追わず” である。 そして、何よりも厄介なのがこの男―― スラリとした長身に、柔らかな栗色の髪を持ち、キラキラと輝いて見える黒い瞳が印象的な、美男子なのである。 しかも、成績優秀で運動神経抜群。 どの運動部にも正式には所属していないが、あまりにも何でもこなせるせいか、よく助っ人として試合に呼ばれたりしている。 そんな彼が女の子からモテないはずはなく―― この高校に入学して間もない頃から、“校内一のモテ男”と呼ばれ続けている。 だが、このモテ男、先程フラれた時の台詞からでも分かるように、 「俺オタクだから、デートよりもゲームとか漫画とかアニメを観る予定を優先するけど、いい?」 かなりのオタクである。 だから付き合う時の条件は、彼女よりもそちらを優先するが文句を言うな、ということだ。 「うん、いい。大丈夫!」 何としてでも頼斗と付き合いたい彼女は、何度も首を縦に振った。 今まで頼斗に告白した女の子は、皆して最初はそう言うのだが―― まぁ……大体はもって3ヶ月。 この彼女はいつまで耐えられるのか。 校舎の窓から2人の様子を見物していた他の生徒たちは、 「2ヶ月!」 「いや、1週間だろ!」 購買の焼きそばパンで賭けを始めた。
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