308人が本棚に入れています
本棚に追加
頼斗たちの母だけを、一途に愛している。
いつか、自分もそんな風に誰かを愛してみたいという願望は、実は頼斗にもある。
だけど、そんな相手はなかなか現れなくて。
だから、色んな女の子と付き合ってみて、そんな相手に出会えないかと模索しているところなのだ。
幸いなことに、常に彼女がいると言っても過言ではないくらい、容姿には恵まれている。
これを利用しない手はないと思っている。
それなのに、この隣の席の希美は何故だか姫花を一筋に推していて、頼斗に靡く気配が全くない。
「あっ……ごめん、そういう意味じゃなくて」
希美は何かに気付いたのか、慌てて両手を前に突き出してブンブンと振った。
その振動で、希美の赤いフレームの眼鏡が少しだけずり落ちた。
「桐生君はカッコイイと思うよ。でも、私は姫ちゃんの顔がタイプというか」
希美が、眼鏡の位置を直しながらそう言った。
「……」
誰もそんなことは聞いていないが。
だが、タイプじゃないなんて初めて言われた。
「やっぱり、梅本って変わってて面白いな」
言うことがその辺の女子とは全く違っていて、頼斗には新鮮に感じた。
最初のコメントを投稿しよう!