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「……」
黙り込んだ頼斗に、
「とりあえず俺はもう帰るから、後はのんちゃんと好きにしてていーよ」
賢祐はへらっと笑うと、部屋を出ていった。
しばらくしてから、
「梅本」
頼斗がいつもよりも低い声で希美を呼び、
「!」
希美はびくっと体を強ばらせた。
「……あんなヤツが、俺よりも大事なの?」
唯には急ぐなと警告されていたのに、今の頼斗は我慢出来そうになかった。
「……」
黙ったまま俯く希美に、
「俺なら、絶対に梅本だけを大事にするのに……!」
両肩を掴んで迫ってしまっていた。
「桐生君……痛い……」
左肩の痛みに顔を顰める希美を見て、
「あっ……ごめん……」
頼斗は慌てて希美から離れた。
「……ケンちゃんは、私が一番辛い時に一緒にいてくれた人だから」
賢祐から離れられない理由を、希美は頼斗へと告げた。
「……でも、アイツは梅本のこと全然大事にしてねぇじゃねぇか」
「それは……私の片想いだから」
「……っ!」
あんなに酷い男でも、希美は賢祐を好いているのだと思い知った頼斗は、また奥歯をギリッと噛み締めた。
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