急がば回れ

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「梅本……」 頼斗が目の前にいるのに、希美の瞳に映っているのは、あのクズ男だけ。 どうしても頼斗を見てくれない希美に、頼斗の胸はどんどん締め付けられていく。 (……苦しい……) 片想いがこんなに辛いものだったなんて、知らなかった。 「お前が、どうしたって俺を見てくれないのは分かった」 自分でそう言いながらも、その自分の言葉に深く傷付いた。 「でも……」 唯から受けた警告が、一瞬だけ脳裏を()ぎった。 これを破れば多分、もう希美との関係は修復出来ない。 分かっているのに―― 急がば回れなんて、クソ喰らえだと思ってしまった。 「俺は、梅本のことがどうしようもなく好きだ」 「……!」 途端にびくっと震える希美の体。 「せっかく、友達としてこれから仲良くなりたいと思ってたけど……もう無理だ」 「……」 「梅本のこと、もう友達としてなんて見られない」 「……ごめんなさい……」 希美の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。 「……桐生君のこと、やっぱりそんな風に見られない……」 「……」 「……ごめん……本当にごめんね……」
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