急がば回れ

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ぐすぐすと泣きじゃくる希美に、 「……フラれてるのは俺の方なんだけど、なんで梅本が泣いてんの?」 頼斗は呆れた顔をした。 希美にそっと歩み寄り、指でその涙を優しく拭う。 「そんな風に泣かれたら、本当は俺のこと好きなのかもって期待するだろ」 そう言いつつも、頼斗は心の中ではしっかりと期待していた。 だって、そんなのは――顔を見ていれば分かるから。 「俺と付き合えない理由、ちゃんと話して。でないと俺、全然納得出来ないから」 「……」 希美はまだ涙の溢れる瞳で、ちらりと頼斗を見た。 頼斗の優しく真っ直ぐな眼差しに、 「!」 希美の胸はドキッと高鳴る。 「……桐生君、彼女よりもゲームとか漫画読む時間を優先するんでしょ?」 それは、校内では知らない者はいないと断言出来る程、有名な話だ。 「梅本が一番大事に決まってるだろ。最近じゃあ、ゲームも全くしてねぇし」 「どうして……」 「梅本のことを好きになってから、どうしてもゲームに集中出来なくなって」 そして、頼斗はニッと笑う。 「こんなこと、初めてだ」 「……!」 そんな頼斗の笑顔に、希美はドキドキが止まらなくなった。 「ねぇ。俺と付き合えない理由、ちゃんと聞かせて?」 涙を拭っていた頼斗の手が、希美の頬に優しく添えられる。 「……少し長くなるよ?」 「ん。大丈夫」 希美を見つめる頼斗の表情があまりにも優しいので、 「……実はね」 希美は話す決心をした。
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