希美の傷

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だが、中学生当時の希美は、まだどこの高校に進学するかも決まっていないのに、一人暮らしをすることだけが決定してしまい、勉強に集中出来る状態ではなかった。 成績がどんどん落ちていき、母の婚約者の勧めで塾に通うようになった。 そこで出会ったのが、賢祐だった。 賢祐は、大人しくて真面目な希美を常に気にかけてくれて、親身になって相談にも乗ってくれた。 一人暮らしが不安なら俺が毎日遊びに行くから、と言ってくれて、それだけで不安な気持ちも掻き消えた。 賢祐だけが、心の()り所だった。 無事に第一志望の高校にも入学出来て、希美の一人暮らしが始まると、賢祐はほぼ毎日泊まりに来てくれた。 寂しいと感じる暇なんて、全くなかった。 でもそれがそのうち、賢祐が寄り付かなくなる日が増え始めた。 それは、希美が生理になった時。 生理痛の重い希美は、そんな時こそ賢祐に傍にいて欲しかったのだが―― 体目的の賢祐が、希美の生理中に訪れることは全くなくなってしまった。 そんなある時、その生理がしばらく来なくなることがあった。 ドラッグストアでこっそり購入した妊娠検査薬の結果は、陽性。
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