希美の傷

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「……これは許して欲しい」 頼斗の控えめなお願いに、 「そんな勝手な……」 希美は呆れた。 「希美は、嫌か? 俺に抱き締められるの」 そんな悲しそうな声で訊ねるなんて、 「ず、ずるい……」 思わず抗議をしたけれど、 「ずるいって何が?」 頼斗は質問を重ねながら、希美を更に強く抱き締めた。 「……私が嫌がってないって分かってるクセに」 不服そうに答えると、 「分かってたけど、ちゃんと希美の口から聞きたかったから」 頼斗は満足げに微笑んだ。 「俺のこと、好き?」 「……」 頼斗のペースに乗せられたくなくて、希美は黙り込む。 無視をされても気にしない頼斗は、 「俺は、希美のこと大好きだよ」 希美に甘い笑顔を向けた。 「!」 途端に顔を真っ赤に染める希美に、 「……可愛いなぁ」 頼斗は嬉しそうに微笑んだ。 「桐生君のそういうところが、チャラいって言ってるの!」 希美は慌てて頼斗を睨みつけたが、 「……俺、他の子に可愛いなんて言ったこと一度もねぇよ?」 頼斗はきょとんとした後、 「希美が初めて」 また甘く優しい笑顔を希美へと向けるので、 「……!」 希美の顔は更に真っ赤に染まった。 そして、それは、 「マジ可愛い……」 頼斗を喜ばせてしまうだけだった。
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