希美の傷

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頼斗はふと希美の体を離し、その顔からそっと眼鏡を奪い取った。 「桐生君……?」 「……」 希美の素顔をまじまじと見つめた頼斗は、 「やっぱり眼鏡ない方がめちゃくちゃ可愛いじゃん」 ふわりと柔らかく笑った。 「えっ……」 戸惑う希美に、 「ずっとコンタクトにしたらいいのに」 頼斗はそう提案したが、 「……私、目は全然悪くないから」 そんな希美の一言に、 「えぇ!?」 驚いて目を見開いた。 「じゃあ、なんで眼鏡……?」 「……私、高校入学と同時に苗字が変わったから」 希美は気まずそうに頼斗から目を逸らす。 「中学までの知り合いに会っても、眼鏡かけてたらパッと見ではバレないかなって」 そんな深刻な事情だったとは思ってもみなかった頼斗は、 「……ごめん」 希美にそっと眼鏡を返した。 「ううん……可愛いって言ってくれて、嬉しかったから」 頼斗から眼鏡を受け取った希美は、それをテーブルの上に静かに置く。 「……明日から、眼鏡なしで学校行ってみようかな」 そう言ってはにかむ希美を見た頼斗は、 「……やっぱり学校には眼鏡かけて行って」 何故だか発言を撤回した。
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