308人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、希美が新しいコーヒーを淹れ直してくれたので、頼斗は再びチャレンジしてみたのだが――
「……ブラックって何か胃が焼けそう……」
砂糖もミルクも入れずに、ブラックのまま飲んでみた頼斗は、その整った顔を思いっ切り歪めた。
「……無理しなくていいのに」
頼斗を呆れたような眼差しで見つめる希美は、砂糖とミルクを控えめにした苦めのコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
「……今度から紅茶も用意しておこうかな」
そんな希美の独り言に、
「!」
頼斗は大きく反応した。
「それって、俺のため?」
嬉しそうな頼斗に、素直に頷きたくなくて、
「……私が飲みたくなっただけ」
希美はプイッと顔を背けた。
「また遊びに来ていいよって意味かと思ったのに」
頼斗が、露骨にしょんぼりと項垂れた。
「……うん、また来てくれてもいいよ」
希美のそんな台詞に、
「希美って、ツンデレ?」
顔を上げた頼斗はニヤリと笑う。
「……やっぱりもう二度と来ないで」
希美に冷たい眼差しで睨まれ、
「えぇ!? 嘘です冗談ですごめんなさい!!」
頼斗は慌てて両手を合わせた。
「また希美と、こうやって2人きりで過ごしたい」
真剣な眼差しで懇願する頼斗に、
「……私も、桐生君と一緒だと楽しいから」
希美も本音をぽつりと零した。
最初のコメントを投稿しよう!