希美の傷

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結局、希美が新しいコーヒーを淹れ直してくれたので、頼斗は再びチャレンジしてみたのだが―― 「……ブラックって何か胃が焼けそう……」 砂糖もミルクも入れずに、ブラックのまま飲んでみた頼斗は、その整った顔を思いっ切り歪めた。 「……無理しなくていいのに」 頼斗を呆れたような眼差しで見つめる希美は、砂糖とミルクを控えめにした苦めのコーヒーを美味しそうに飲んでいた。 「……今度から紅茶も用意しておこうかな」 そんな希美の独り言に、 「!」 頼斗は大きく反応した。 「それって、俺のため?」 嬉しそうな頼斗に、素直に頷きたくなくて、 「……私が飲みたくなっただけ」 希美はプイッと顔を背けた。 「また遊びに来ていいよって意味かと思ったのに」 頼斗が、露骨にしょんぼりと項垂れた。 「……うん、また来てくれてもいいよ」 希美のそんな台詞に、 「希美って、ツンデレ?」 顔を上げた頼斗はニヤリと笑う。 「……やっぱりもう二度と来ないで」 希美に冷たい眼差しで睨まれ、 「えぇ!? 嘘です冗談ですごめんなさい!!」 頼斗は慌てて両手を合わせた。 「また希美と、こうやって2人きりで過ごしたい」 真剣な眼差しで懇願する頼斗に、 「……私も、桐生君と一緒だと楽しいから」 希美も本音をぽつりと零した。
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