希美の傷

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希美の一言にキュンとした頼斗は、 「……やっぱり、俺ら付き合わない?」 希美にぐいっと迫った。 「……待ってくれるんじゃなかったの?」 怪訝そうな顔をする希美に、 「……ちょっと自信ないかも」 頼斗はまたシュンと項垂れた。 「希美のことになると多分、俺、余裕がなくなる気がする」 「……」 「無理に襲ったりはしないけど……俺を煽るようなことは絶対に言わないでくれよ」 頼斗の真剣な表情に、 「……っ」 思わず“好き”と言ってしまいそうになって、希美は慌てて俯いた。 「希美……好きだ」 希美の考えていることが伝わってしまったのか、頼斗がそんなことを言い出して、 「……」 希美は俯いたまま黙り込んだ。 まだ賢祐と別れていない希美に、頼斗を好きだと言える資格はないから。 頼斗もそれを分かっているのか、希美に無理に返事を求めたりはしない。 その代わりに、希美を優しく抱き寄せる。 それを拒絶しないのが、希美なりの返事のつもりだった。 「……いつか、希美の口から“好き”って聞かせて欲しいな」 ぽつりと零れた頼斗の声に、 「……うん」 希美は小さく頷いた。
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