凍結ギャンブラー

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 ……だから南は怒らなかったのか。ずっと償いのつもりで俺に優しくしていたのか。怒る資格なんて無いからとずっと我慢してきたのか。 「オフクロは……自分から飛び込んだんだ。家に遺書もあった。だからお前もお前のお父さんも悪くない。悪いのはオフクロだ」 「お父さんがもっと気をつけて運転していれば良かったの」 「そんな事無い。避けられなかった。だからお父さんだって罪に問われなかっただろ」 「でも轢いたのはお父さん。お父さんがもっと注意をしていれば」 「違う! あの弱虫なオフクロが悪いんだ。死んで楽になろうなんて思ったオフクロが、俺をおいて逝っちまったオフクロが全部悪いんだ!」  俺は南を抱きしめた。色々な思いが吹き出して来た。反抗期の俺を1人で育てるのに疲れたと書き残し、自ら車の前に飛び出したオフクロ、そんなオフクロの身勝手な行動に人生を狂わされた親子、罪の意識で怒る事さえ出来なくなった南。俺が反抗なんてしなきゃオフクロは死ななかった。オフクロに優しくすれば良かったんだ。南を好きにならなきゃ良かったんだ。出会わなければ良かったんだ。俺なんか生まれて来なければ良かったんだ。みんな俺が悪かったんだ。  俺は泣いた。南も泣いた。2人で大声で泣いた。
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