凍結ギャンブラー

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 けたたましい音と激しく光る躯体。「大当たり」の文字に画面の中のキャラクターは大喜びしている。それに反して俺の心は冷ややかだった。  せっかくの日曜日にパチンコ屋にいるなんて我ながら呆れる。共働きの妻と一緒に過ごせる週に1度の休日なのに、2人で遊びに行くでも無く俺は朝から機械に金を注ぎ込み続けていた。3万かけてやっと来た大当たり。喜びよりもいくら取り戻せるか、それだけが気掛かりだった。  結局出た玉も全て飲み込まれた。ホールを出ると薄ら寒い風が俺に吹き付けてきた。心も財布もスッカラカンな俺を凍り付けるには十分だった。 「お帰りなさい。夕飯出来てるわよ。どうせお昼も食べないで打ってたんでしょう?」  妻の(みなみ)は笑顔で迎えてくれた。部屋の中は焼き魚の香ばしい匂いが立ち込めていた。  南は優しかった。俺がいくら使ったのか、勝ったのか負けたのかも聞かない。 「ごめんな。一緒にどっか遊びに行けば良かったのにな」 「別に。今日はお天気が良かったから布団干しといたよ。それに洗濯も掃除もしたし。遊びになんて行ってたら出来なかったよ」  お互い働いているのに俺は自分の好きな事をして過ごし南は家の仕事を片付けて休日を終える。悪いと思う。男って情けない。3万あったら2人で美味しい物を食べ、洋服を1枚買ったとしてもお釣りが来ただろうに。後悔したところで俺の財布は空っぽだ。  南の料理は温かくて美味しかった。布団もフカフカだった。だが逆にそれが俺を惨めにさせた。凍り付いた心を溶かすには不十分だった。
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