凍結ギャンブラー

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「はぁ〜〜」  月曜日、出社してすぐに俺は大きなため息をついた。 「どうしたんですか? 朝から」  声を掛けて来たのは1年後輩の関谷(せきや)だった。 「昨日さあ、大負けしちまってさ」 「いくらヤラれたんですか?」 「3万……」 「えー! そりゃまた悲惨ですねえ。じゃあしばらくお昼抜きですね?」 「いや、昼メシは大丈夫なんだ」  俺はカバンから弁当箱を出して見せた。朝起きたら俺のカバンには弁当が、財布には1万円札が入っていた。 「え〜! 愛妻弁当ですか? 羨ましいなあ。うちなんかパチンコでスッたなんて言ったら大激怒されてしばらくは口もきいてもらえないですよ。勿論小遣いも貰えないです。いいなあ、そんな優しい奥さん欲しかったなあ」  関谷はそう言うが、これはこれで辛いんだ。怒られた方がマシとさえ思える。自分が物凄く低俗で怒る価値さえ無い人間だと思われている気がする。惨めで情けなくて自分が嫌になる。だったらもうパチンコなんか行かなきゃいいのだが、それが出来ないから尚更落ち込む。  南は本当に怒らない。感情的にならない。いつも自分の事より俺の事を考えてくれる。自分だって働いているのに家事全般をこなし俺に小遣いさえくれる。貯金も出来ずいつまでもアパート暮らしなのに文句の1つも言わない。出来過ぎた嫁だ。  もしかしたら俺は見下されているのだろうか。夫としてでは無く手の掛かる子供扱いされているのではないか。そんな事さえ思ってしまう。
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