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あの娘の溜め息
一
「はぁ…」
「どうしたの?」
浮かない表情の1人の女子に『ボク』は声をかけた。今は昼休み。教室には誰もいない。何故か…。
「言えないな…」
チラリとこちらを見て彼女はまた前を向く。頭を掻きむしっている。やはり悩みごとをしているようだ。いや、何か落ち込んでいるのか、いや、この世界にうんざりしているのか。
茶混じりの長い髪を靡かせて椅子に座っている彼女は本条 茜さん。『ボク』が恋している人だ。
タイミングが悪すぎた……
「そっか…、悩んでるの?」
馬鹿か僕は!言い聞かせても脳が言うことを聞いてくれない。何の関係も無い彼女になんて事を訊いているんだ。
「えっ!?」
彼女は思わず顔を手で押さえて失笑した。
「えっ!?」
『ボク』も同じ返事をした。教室は閑散としていた。何せ誰もいないのだから。頬が少し赤くなってしまった。こんな思い初めてである。
空っぽの『ボク』何かに。
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