あの娘の溜め息

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その瞬間、『ボク』の体の中が急に熱くなった。誰にも話しかけられたことのない『ボク』に用事があるのかと思って妙に期待感を抱いてしまった。 こちらを見ている。額から汗が出てきた。 「どうしたんですか?」 「いや、君いつも1人だからさ、私と一緒だなと思って」 これが彼女との初めての会話だった。そばかすがある自分の顔がコンプレックスである『ボク』は、初めて相手の顔を見て話をしただろう。 自分を一瞬でも見てくれる人がいたのだと思うと、気持ち悪いほどの満足感に浸っていた。 独りぼっちの帰り道も、その日だけは短く感じた。
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