突然の幸運?

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突然の幸運?

いろいろな手続きや片付けを済ませて、大学に戻れたのは2月の半ばだった。私がいない間に、他の学生は既に4年生の卒業研究のために所属する研究室が決まっていた。学生課に問い合わせてみたが、ほとんどの研究室は定員になっており、入れる研究室はほとんどなかった。 元々、興味のない学部の興味のない学科で、さらに興味のない研究室から選んで、そこに行って事情を話して入れてもらうなんてこと、私にできるだろうか。大体、どうやらどの研究室も、既に新入生歓迎会は済んでいるらしい。これからそこに入っていくなんて…。 私は絶望感でいっぱいだった。 何とかしなくてはと思いながらも、何ともできないまま時間は過ぎた。 大学をやめることも考えたが、将来のことを考えると、やはり卒業はしたほうがいいと思えた。父の残してくれた貯金や保険金で、学費や生活費は十分にまかなえそうであった。 学校に戻って1週間。私は結局何もできないままでいた。あと1週間で学年末テストが始まり、そのあとは、所属研究室で卒業研究をしなくてはいけない。 なんとか、今週中にどこかの研究室に入れてもらわなくてはと考えながら、大学へ向かった。 月曜日の授業は7時間目まで取っている。6時間目の微生物系統学は必修なので、教室は満員だ。でも、一角だけ空いているところがある。教壇の目の前の席だ。そして、そこは私の指定席でもある。別に真面目だからではない。そこがいつも空いているからだ。 微生物系統学は講師の上條海(かみじょうかい)先生が担当だ。年齢は30代前半ぐらいで、いつもスーツの上に白衣を羽織っていて、軽くウェーブのかかった長い前髪が目をほとんど隠しているので、顔全体はよくわからないが、一度、女子学生が先生が髪をかき上げたところを見て、すごいイケメンだったと騒いでいるのを聞いたことがある。目が髪であまり見えないせいで表情がわかりにくく、クールな大人のイメージで、他の先生のようにつまらない冗談を言ったり、余談をしたりすることはない。授業は低くもなく高くもなく、落ち着いた中低音の声で淡々と進められ、それが心地いいので、好きな講義ではあった。ただ、そのせいか、寝ている学生も相当数いた。 7時間目の微生物(そう)解析論は選択なので、学生がぐっと減る。7時間目の終わりは19時半なので、みんなあまり取りたがらない。私は出来るだけ取れる授業は全部取るようにしているので、この授業も取っている。こちらも上條先生が担当で、同じ講義室で受けられるので、移動しないでいいというのもいい。大学というところは、東の校舎の1階で授業を受けた後、西の校舎の5階で授業などということがざらにあるので、同じ教室に座ったまま、次の授業を受けられるのはありがたかった。 多分、先生にとってもそうなのだろう。2つの授業のあいだの休み時間は、そのまま教室にいる。教壇の椅子に座ると、私と目が合ってしまいそうだからなのか、椅子を黒板の端の方に持っていって、いつもそこに座っている。 でも、今日はいつもと違っていた。5分ほど座った後、先生は立ち上がった。
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