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珍しく遅刻して二限目が終わった後に登校してきた夏芽とは、中学からの友人で現クラスメイトである。いつもそうしているから、と心の中で言い訳して、斜め後ろの席である夏芽の机の上で一緒に昼食の弁当を広げながら、更に後ろの席の充のことばかり目で追ってしまっていた。女子数人に昼食の仲間に入れてもらったらしく、少し微笑みながら皆と話していた。
「こぼすよ」
食事が上の空で行儀が悪いことを不快に思ったのか、夏芽の口調にはどこか棘があった。半分無意識で彼女を見つめてしまっていたのを今更だが、誤魔化そうと、ぐるりと首を回して窓の外を見る。相変わらず影たちはゆらゆらと移動していた。その色はそれ以上濃くも薄くもなってはいない。何の気なしに一応流行りの話題として夏芽に聞いてみた。
「夕べ、あれの出てきた時見た?」
清郁は昨夜早めに寝ていたので影が現れたことに一切気づかなく、朝のニュースでその事態を知った。まあ、休校になるわけではなさそうだったので自分には関係ないなとそのままいつも通りの朝になった。
「見た」
「マジか、俺寝てたわ」
「……別に、普通だったよ」
「普通って、なに?」
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