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助っ人
歩いていただけなのに
アレクはまきりかと2人で河川敷を歩いていた。
ねぇアレク、あそこで野球している子たちって同じクラスの子たちじゃない?
そうだね。ちょっと寄っていく?
特にすることないからそうしようか。
2人はグラウンドに向かうとただ事じゃないような雰囲気だった。
「おい、大丈夫か?打席に立てるか?」
「ゴメン、痛くて打席に立てそうにない」
マジか……。どうしよう……。
男の子はアレクの方を見た。
よし、花田代わりに打席に立ってくれ。
ちょっと待って、野球やった事ないしいきなり言われても……。
花田の運動神経なら大丈夫。右利き?左利き?
右利きだけど……。ホントに打席に立つの?
バットは左手が下で右手を上に持って両手をくっつけるようにして足を少し広げてこう構える。1回振ってみて。
難しいこと言うね、とりあえず言われるがままバットを振った。こんな感じでいいの?
よし、完璧だ。ホームベースの左側に入ってボールが来たら今のようにスイングしてくれ。
「いきなり来て注文が多すぎだろ〜」
「カーン。ポトッ」
アレクはバットを持ったまましばらく立っていた。
バットを置いてベースを1つずつ踏んで帰って来い。
どっちに走ればいいの?
一塁ベース、他の人と違うグローブをはめている人の方向に向かって走って。その後、真ん中、もう1つのベース、そして横にあるベースを踏めばいいよ。
自分が何をしたか分からないが言われるがままバットを置いてベースを駆け抜けた。
ダイヤモンドを1周すると男の子たちは土下座をしてありがとうございますとずっと言っていた。
まきりか、用事終わったみたいだからまた河川敷歩こうよ。
男の子たち土下座して喜んでいたけれど何が起きたのかね。
さぁ〜、野球のことよく分からないから何が起きたか知らないけれど喜んでくれたのなら結果オーライかな。
月曜日、学校に行くとアレクは自分のやったことがスゴかったと知ることになる。
花田、この前ホームラン打ったってスゴいな。それも野球やるの始めてみたいなのに。
たまたまだよ。次やったら打てるかどうか分からないし……。
花田にお願いがあって今度の土曜日、河川敷でサッカーやる予定でキーパーがいなくて困っていてやってくれないかな?
何でアレクがやらなきゃいけないの?男の子誘えば?
誘ったけれど予定あって無理みたいで……。アイスご馳走するからどうかな?
まきりか、どうする?
どうして梨華に聞くの?アレクの問題でしょ?
じゃあまきりかの分も買ってくれるならいいよ。
よし、2人分買うから絶対に来てくれよ。
うん、分かった。
運動苦手なのにどうして助っ人みたいなことしなきゃいけないのかね。
みんなアレクの運動神経がいいってことを認めているからだよ。梨華の分のアイスまでありがとう。
土曜日、ジャージを着て河川敷を歩いていた。
花田、真木田こっちだよ〜。
ジャージで来るって花田、やる気満々だね。
やったことないけれど負けることはキライだからね。それでアレクはどうしたらいいの?
この手袋つけてゴールの前でキャッチするかパンチングしてくれればいいよ。
キャッチするのは分かるけれどパンチングってどうやってやるの?
1回、やって見せるね。この辺りに立ってボールをキャッチするか取れないボールはこのようにパンチングしてくれれば大丈夫だよ。
点に絡む大事なポジション、アレクに出来るかな?
川にホームランを打ち込んだ花田なら大丈夫。もうすぐ試合始まるからこのグラブを付けて。
試合が始まってアレクは言われたとおりボールをキャッチしたり、届かないボールはパンチングをした。これでいいのかと半信半疑だった。
そして試合が終わって男の子たちが呼んだ。
花田、お疲れ様。この相手に負けたことしかなかったから引き分けは上出来だよ。じゃあ駄菓子屋に行ってアイス買いに行こうか。
アレクは人助け出来たならよかったという思いでいた。これで付き添いのまきりかにもアイスが当たるならいいか。
アレクはチョコアイス、まきりかはイチゴアイスを選び男の子に渡した。汗をかいたあとのアイスは美味しい、たまには身体を動かすのも悪くないかなと感じていたアレクだった。
次の月曜日、学校に行くとゴールキーパーの動きが機敏でよかった。是非チームに入ってほしいとお願いをしていた。すると野球をしている子たちも花田は戦力になるから必要だと喧嘩していた。
アレクは何も知らず教室に入るとまきりかに何事なのかと尋ねた。
サッカーやっている子と野球やっている子でアレクをどっちのチームに入るかで喧嘩しているよ。ところでアレクはどっちに入るの?
アレク?どっちにも入る気はないよ。
それを聞いた男の子たちはアレクにしつこく好きなポジションやらせてあげるからお願いと只管頭を下げていた。
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